2010/07/26(Mon)
歯の再植で知ったこと
歯の移植、再植をやっていて知ったこと。」
歯を再植すると、だいたい3週間から、4週間でくっつきます。
3週間ではまだ動いて、頼りない感じですけど、コンコンと叩いても痛みは感じません。
しばらくの間、プラスチックで作った仮歯を入れて食べてもらい患者さんに大丈夫なことを確認してもらって最終的なものを入れます。
再植をやり始めた頃は、うまくゆくのか不安がありましたが、50本くらいを過ぎた頃には自信もつき、私のレパートリーの1つになりました。
この歯の再植で1回、驚くような経験をしました。
3年程前のことです。70代の男性の患者さんの、左上の小臼歯を再植しました。
オペを終えた後、私は何の心配もしませんでした。オペは完璧でした。
ところが、次の日患者さんが当るととても痛いから見てくれと言って来院されました。
固定がはずれていましたが何か様子がおかしいと思いました。たとえ固定していなくても再植がうまくいっていたら物が当っても痛みなんてないことは経験上よく知っていることだったからです。
そして、その歯の動き方が異常なくらいグラグラしているんです。
イヤーな感じがしたので毎日消毒しに来てもらい、そのたびにレントゲンで確認しました。すると
2週間くらいで根の周囲の骨が全部溶けてなくなってしまったんです。
もう歯は骨とくっつきません。完全な失敗です。
「何でこうなるの?イージーな症例だったのに。ウソだろ?」患者さんには失敗したことを告げて、謝りましたが、原因が全く分りません。
その頃私は、月に1回、ペリオ(歯槽膿漏)の勉強会を受講していました。
そこで、このことについて質問したところ、同じく勉強に来ている一人の先生が
「ガンで放射線治療を受けているのではないか?」
と言いました。
たしかにその患者さんは過去に肝臓ガンで放射線治療を受けたことがありました。
でもそれは再植をする5年程前なんです。5年も前に受けた放射線治療が原因だなんて思いもしませんでした。
ところで良く似たことで、顎の骨に関することなのですが、インプラントをやってはいけない症例で
「現在、放射線治療を受けている人。」という警告があります。
これと照らし合わせると5年も経っているのならインプラントも再植も良さそうに思えます。
その後、同じ地区の口腔外科の先生にこのことを尋ねてみて驚きました。
「肝臓ガンなどで腹部に放射線治療を施すと上半身の骨の代謝が失われることがある。
たとえば腕の骨が折れても、くっつかなくなることがある。これは何年かしたら元のようになるとは言えない。もしかしたら一生かも知れない。 」
こう言われたんです。
知らなかった。これって本当なんですか?
こんなこと私は全々知りませんでした。
その患者さんは1年程前に亡くなりましたが、私にとって忘れられない患者さんです
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佐賀県伊万里市:浦上歯科医院